世界のニュースが一瞬でマーケットを揺らす──それを実感させたのが、イランとイスラエルの軍事衝突でした。
2024年4月、そして2025年6月にも両国の緊張が高まり、一時的な報復攻撃や迎撃が発生。市場は敏感に反応しました。
今回は、この地政学リスク(戦争・紛争)が、どのように為替市場・ゴールド・原油に影響するのかを、実例を交えて整理していきます。
1. 地政学リスクとは?そしてなぜ為替が動くのか?
「地政学リスク」とは、戦争・テロ・政変などが世界の経済・資金の流れに影響を与えるリスクのこと。
金融市場ではこれをきっかけに、以下のような動きが起こります:
- リスク回避(Risk Off)による安全資産への資金シフト
- 新興国や高リスク資産からの資本流出
- 原油・金といったコモディティの価格変動
このようなとき、相場は一方向に急変することが多く、短期トレードにも長期投資にも重要な判断材料となります。
2. イラン・イスラエル衝突で市場はこう動いた(2025年6月時点)
以下は、実際に報復攻撃や停戦が報じられた際の、市場の動きです。
✅ 原油価格:急騰 → 急落
- 緊張が高まった直後、WTI原油は約70ドル台から80ドル超へ上昇。
- 停戦が報じられると一転して下落し、70ドル台後半〜60ドル台へ反落。
→ 中東=原油供給地への不安が価格を押し上げ、平和的解決の兆しが落ち着かせる、という構図。
✅ ゴールド(XAUUSD):急騰
- 地政学リスクが高まる中、ゴールド価格は一時3,375ドル台まで上昇(史上最高値付近)。
- 米ドル高の圧力がありながらも、安全資産として強く買われたことが確認されています。
✅ 米ドル(USD):一時上昇→その後下落
- 初動では「有事のドル買い」が見られたものの、停戦報道とともにリスクオンの流れに転換し、ドルは下落。
- 特にリスク資産(株・高金利通貨)が買われ始めるとドルの上値は重くなる傾向。
✅ 円・スイスフラン:小幅に上昇
- リスクオフ場面では、円やスイスフランが買われる動きが確認されました。
- 特にスイスフランはユーロに対しても強さを見せる場面がありました。
✅ 新興国通貨(TRY, ZARなど):下落
- 紛争懸念が拡大すると、リスク資産とされる新興国通貨が売られ、ドルや円へ資金が移動。
- 停戦報道後にやや戻すも、地政学リスク下では基本的に不安定な動き。
3. 戦争時の通貨の基本的な動き方
通貨 | 傾向 | 主な理由 |
---|---|---|
円(JPY) | 上昇(リスクオフ) | キャリートレード巻き戻し・安全資産と見なされやすい |
スイスフラン(CHF) | 上昇(リスクオフ) | 永世中立国としての信頼性 |
米ドル(USD) | 初動は上昇 → その後弱含み | 基軸通貨だが、戦地関与が深まると重しに |
ユーロ(EUR) | 弱含み | 戦地への地理的近さ・エネルギー依存 |
新興国通貨 | 下落 | 資本流出・政治リスクから売られやすい |
4. ゴールドは「有事の金」──やっぱり強かった
ゴールドは歴史的に「戦争=買われる資産」として知られています。
今回も例外ではなく、ドル高や利上げ観測といったマイナス材料を跳ね返す形で上昇しました。
■ ゴールドが買われる理由:
- 通貨リスクに左右されない「実物資産」
- 世界的に流動性が高く、インフレや信用不安にも強い
- 中央銀行も保有する安心資産
長期的な投資対象としても、不安定な時代に頼れる存在です。
5. トレーダーが取るべき戦略
こうした地政学リスクのニュースに対して、どうトレード戦略を立てるべきか?
以下のポイントが現実的です。
- ✅ ポジション調整・リスク管理の徹底
→ 急変動に備え、ロットサイズ・損切りラインの調整を。 - ✅ ゴールドのロング戦略
→ 短期的でも上昇余地あり、押し目買いを狙いやすい。 - ✅ 安全通貨(JPY/CHF)への分散
→ 揺れの大きい場面では、有効な逃避先。 - ✅ 新興国通貨や高金利通貨の注意喚起
→ 高スワップに惹かれて保有すると、突発的な急落リスクあり。
【まとめ】「不安定な世界」は、読み解けるチャンスでもある
地政学リスクは突発的で、予測不可能な側面もあります。
しかし、市場の反応パターンを知っていれば、動揺せずに“チャンス”として動けるトレーダーになれます。
✅ 戦争・衝突時はまず「リスクオフ」
✅ 安全資産(円・フラン・金)を中心に注目
✅ 原油や新興国通貨も巻き込まれるため要監視
✅ 停戦報道や外交的打開で、一気にリスクオンへ転換することもある
こうした「世界情勢 × マーケットの反応パターン」を頭に入れておくことで、どんな時代でも安定した投資判断ができるようになります。